『時間外請求します!』とクリニックスタッフから言われた時の対処法
クリニックは『患者様を相手にするサービス業』という特性上、どうしても終業時間を超えて業務が発生してしまうことも少なくありません。
更に、スタッフにとってはお金の問題は非常にセンシティブである為、時間外労働についてはクリニック経営者が思っている以上に敏感だと言っていいでしょう。
例えばスタッフから「タイムカードをいつ押せばいいか」「この作業は時間外に含めていいか」などを聞かれたことはありませんか?
この記事では労働時間や時間外賃金について、事例を含めてご紹介します。
- 労働時間と時間外賃金について理解したい
- 業務時間の範囲を知りたい
- 着替えの時間、電話当番は業務時間か知りたい
トラブルの元になりやすい給料問題について、まずはしっかり自身が把握しておく事が大切です。
クリニック労働時間と時間外賃金のまとめ
- 労働時間と時間外賃金を適切に理解する
- 労働時間の範囲について確認する
- 正しい勤怠管理を導入する
クリニックにおける労働時間と時間外賃金について
労働時間とは
労働時間は、スタッフへ賃金支払いの義務が生じている時間です。
したがって、クリニックの勤怠管理担当者や管理者はスタッフの労働時間を正確に把握し管理しなければなりません。
しかし、労働時間の定義や、どのような時間があてはまるのかを正確に理解している方は多くはないのではないでしょうか。
この記事では、勤怠管理担当者として知っておくべき労働基準法のルールや労働時間の基礎知識について解説していきます。
時間外賃金とは
時間外労働とは、法定労働時間を超えた労働のことです。
労働基準法では、労働時間は
- 1日8時間
- 週40時間
と定められています。この範囲を超えて労働させた場合、法律でいう時間外労働となり、割増賃金の支払いが必要となります。
自主的に始業時間前に出勤しているスタッフに対して、その時間の給料を払う必要があるか?
原則:業務と無関係の早めの出勤については給料を支払う必要はない
労働時間として取り扱うかどうかは、客観的に見てその行為が「使用者の指揮命令下に置かれている」かどうかが判断ポイントになります。
労働時間となるケース
使用者の指揮命令下にあるか否かについては、その行為がクリニックから「義務付けられているか」もしくは「黙示や明示の指示により余儀なくされているか」などが判断ポイントになり、「業務性」「待機性」「義務性」の観点で個別に判断されます。
例えば、次のようなものです。
- 始業前の朝礼など、慣習として参加を余儀なくされている行為
- 出勤打刻は、始業前に着替えを済ませてから行わせている
- 業務終了後に行っている事業所内での後片付けや清掃など
労働時間にならないケース
- 早く出社し朝食を食べている
- 自主的に新聞を読んでいる
など、明らかに指揮命令下ではない場合は業務時間に含まれません。また、客観的というのは、就業規則や労働契約などで定められているかどうかではなく、実態で判断されることになります。
クリニックのユニフォームを着替える時間にも給料を支払う必要があるの?
着替えの時間は労働時間に含まれるかどうか
労働時間として取り扱うかどうかは、繰り返しになりますが、客観的に見てその行為が「使用者の指揮命令下に置かれている」かどうかが判断のポイントとなります。
- クリニックや事務所内で行う必要があるか(場所的制約)
- 義務付けられているまたは余儀なくされているかどうか(ユニフォーム等)
- 着替えや準備行為に要した時間が社会通念上必要かどうか
すなわち、多くの場合は労働時間に含まれると考えるほうが適切です。
始業時刻前に着替える必要がある場合
基本的には準備時間を含む形にしなければいけません。
始業時刻が8時30分からだとしても、「8時15分に出勤して、これとこれをやらなければ診療の受付時刻である8時30分に開始できない」という場合、このことをクリニックがわかっていながら、スタッフの善意に頼ったまま積極的な対策をしていない場合、黙示の業務命令と判断される場合があります。この場合は8時15分を始業時刻にし、準備時間を含む形にしなければいけません。
着替えの時間は労働時間とするべきか
制服の着替え時間が労働時間にあたるかどうか、明確な基準がありません。
しかし、作業服及び保護具等の時間が労働時間にあたるかが争われた三菱重工業長崎造船所事件(最一小判平12・3・9民集54巻3号801頁)を参考にすることができます。本件では、更衣の時間が指揮命令下にあると認められるような特段の事情のある場合は、その時間は労働時間と認められると判断しました。その具体的判断ポイントは以下のものが挙げられます。
①明示の命令がある
個別に指示したり、または就業規則やマニュアル等により、明確に義務付けているケースです。就業規則に「従業員は、特別の場合を除き、所定の制服を着用しなければならない。」と明記している場合、労働時間とみなされる可能性が高くなります
②黙示の命令がある
業務性、待機性、義務性の観点で個別具体的に判断されます。
③場所を拘束している
着替える場所を更衣室でも自宅でもどちらでもよいとしている場合は、更衣時間は原則として労働時間になりません。ただし、制服を着用して通勤することが著しく困難な場合は、更衣場所を拘束しているとみなされ、労働時間と判断される可能性が高くなります。
④業務を行うために通常必要とされる
法令上義務付けられている作業服や保護具等の装着時間は、指揮命令下に置かれているものと判断され、労働時間と判断される可能性が高くなります。
<ここまで読んで下さっている先生方へお伝えしたい事>
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働いているように見えない労働時間、賃金は払うべきか
指示もなく、仕事していない時間を労働時間として取り扱う必要はありません
クリニック側の言い分として「始業前に着替え終わってからコーヒ―を飲んで一服している」「終業後に着替えをしている間」「長時間だらだらと私語をしている」など、集計された労働時間をすべて労働時間として扱うのはどうか…といったものもあるでしょう。
正しく労働時間を管理する
クリニックが適正に労働時間の管理をしておかないと、労働時間として取り扱われる可能性もあります。また、労使双方の認識の違いから労務トラブルというものは起こりがちです。
こういった問題に対して、就業規則に始業前の出勤や準備、退勤後の片付けについてルールとして明文化して周知しておくことや、終業時刻を過ぎた際には、上司から適宜声をかけて業務終了後は速やかに帰宅してもらうといった対応が必要になります。
時間外労働によくある質問
- 着替えの時間に私語や化粧をしている場合どうすればいいですか?
-
タイムカードは実際に業務を始める時刻に打刻し、業務が終了したらすぐ打刻させるように徹底させる。
化粧をしたり同僚とゆっくり雑談をしたりする時間までもが、賃金支払いの対象となる労働時間としてカウントされてしまうということも起こりえます。制服の着替え時間については、あらかじめ必要な時間を決め、その時間分の賃金を支払うというような方法も考えられます。
- 昼休みに電話当番を命じた場合、その分の賃金を支払わなければならないのでしょうか?
-
支払わなければいけません。
昼休み中に電話当番を命じた場合、労働者は使用者の指揮命令下にあり自由に労務から離れる時間が保障されているとはいえず、昼休み中の電話当番は休憩時間ではなく労働時間に該当します。
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- 院長が知るべき労働基準法
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