クリニックで試用期間・パートタイマーを上手に使いこなす方法について
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こんにちは。株式会社メディカルリンクのクリニック採用コラム編集部です。
皆様はクリニックスタッフを採用する時、試用期間を設けたり、パートタイマーを活用していますでしょうか?
一般的には試用期間とは、採用選考の過程では見極めることの難しい、スタッフとしての適格性、能力といった点を判断するために設けられる期間です。
試用期間をうまく使いこなせば、スタッフの業務習得や定着を助けることになりますが、法的な観点からも労務トラブルになることも多い期間になります。また、最近では「パート抜きには運営が成り立たない」と感じているクリニックもあります。正スタッフとパートの違いは、「雇用契約上の勤務時間」にあります。もちろん、それによって任せる業務内容が変わったり、業務責任度が異なったり、扶養内で働きたい要望など、考えるべき事が多くあります。
この記事では試用期間とパートタイマーの活用法と注意点について、詳しく解説していきます。
- 試用期間の上手な活用法を知りたい
- 本採用の拒否など、法的な観点から見た試用期間の扱いを知りたい
- パートタイマーの労務上の注意点を知りたい
常勤で雇う場合はリスクヘッジも備えて、試用期間やパートタイマーを上手に利用したいところですね。
クリニックの試用期間のまとめ
- 試用期間は解約権留保付労働契約であるが、本採用の拒否や解雇可能の基準は高い
- 試用期間中は研修効果の向上が見込め、適性な人材配置の検討ができる
- 試用期間が長い場合は求人上のデメリットがある。
クリニックでの試用期間を上手に使いこなすには
結論:試用期間中の解雇や本採用拒否が容易に可能であるとの認識は危険です。
試用期間とはいえ、解雇や本採用の拒否に求められる水準は高いです。
例えば、労働契約書に「レセプト業務の単独遂行」「〇〇検査の実施」などと具体的に記載しておくことは法的にも一定効果が見込めますが、能力の欠如や業務適正については、スタッフに改善のための具体的な指導・教育を尽くす義務がクリニックにもあります。
簡単に、『〇〇が出来ないから本採用拒否』や『何か業務遂行が遅いから試用期間中の解雇』は出来ない事となります。
試用期間とは
試用期間とは
実際に業務をさせながら従業員の能力や業務への適性などを把握し、自院の業務に合うかどうかを最終的に判断するための期間を指します。
一般的には、試用期間を1-3か月とするクリニックが多いです。
試用期間中の労働契約
試用期間中の契約は、解約権留保付労働契約に該当します。この試用期間のポイントは以下の2点です。
- 正社員としてやっていく見込みがない場合に解雇する権利がある
- しかし、社会通念上の相当な理由がないと解雇できない
一見矛盾するようですが、試用中のスタッフを解雇する権利があるとされる一方で、労働契約は成立しています。
そのため試用期間においても、客観的合理的な理由があり、社会通念上相当とされる場合のみに本採用拒否(解雇)が認められることになっています。次に試用期間の解雇や延長の適法性ついてまとめます。
試用期間における解雇や延長の適法性
試用期間中の解雇や延長も、試用期間の趣旨や目的に照らして客観的に合理的な理由が必要とされ、下記が原則となっています。
・試用期間中の解雇は、試用期間を設定した趣旨に照らして相当である場合
・採用後14日を経過している場合は、法律で定められた解雇予告等の手続きが必要
・試用期間の延長は、原則として同意なしに認められない。
試用期間中といえども、使用者との間に労働契約が成立している点においては、本採用の場合と変わりがありません。そのため試用期間中の解雇も、試用期間の趣旨・目的に照らして客観的に合理的な理由が必要とされます。
本採用の拒否、試用期間中に解雇したい
試用期間であるため、通常の解雇より容易であると考えている場合は要注意です。
その性質上、能力不足や実際の業務態度による解雇基準は本採用後よりは緩やかであると考えられますが、多くの判例では認められていません。
試用期間で解雇したい主な例
- 態度不良・能力不足
- 欠勤・遅刻・早退など
- 協調性がない・指示に従わない
「遅刻が多い」「欠勤が多い」「業務の適性がない」などについてもクリニック側の教育義務や配置転換努力が重要視されます。その上で、繰り返し指導しても改善が見込めないなどに検討を進める必要があります。
解雇、本採用拒否については以下の記事でも詳しく解説しています。
面接で人柄や能力に不安が残る場合の対処
試用期間相当だけ、「期間の定めあり」の契約をする選択肢もあります。
クリニックで多いのは、試用期間相当を、「期間の定めあり」のいわゆる有期雇用として契約するパターンです。試用期間を3ヵ月と設定しているクリニックでは、採用時に通常では「期間の定めなし」の契約を結ぶところ、あえて3ヵ月の有期契約を結ぶということになります。そうして3ヵ月後に働きぶりやスキルに見合った契約で変更、更新する形です。
ただしデメリットの要素も強く、いくつかの内定がある場合など、「内定辞退」の可能性も高くなります。通常であれば、「期間の定めなし」、面接で人柄やスキルに疑問が残る場合、「期間の定めあり」と運用することがおすすめです。
試用期間の目的と活用
採用後のミスマッチを防ぐ
採用活動で見抜けなかった従業員の適性を把握し、採用後のミスマッチを防ぐことが、試用期間の大きな目的となっています。
応募書類や面接だけで、求職者のパーソナリティや能力を的確に判断することは困難です。クリニックの雰囲気や既存スタッフとの相性などは、実際に働いてみなければわからないことも多いでしょう。
試用期間を設けることで、
- クリニック側「本採用しても問題ないか?」
- 求職者側「このクリニックで問題なく働き続けられるか?」
の最終判断ができ、採用後のミスマッチが減らせます。またクリニックとスタッフのお互いが責任感や緊張感をもって取り組むことができるので、研修効果の向上も期待されます。
試用期間終了後の人材配置がしやすい
例えば、スタッフの業務における作業スピードやコミュニケーションのとり方、接遇や勤務態度には、本人が面接でアピールできていない特徴が現れることもあります。
こうした実務でなければ把握しにくい特徴を配属前に知ることで、人材の強みが発揮できる適材適所が実現しやすくなります。するとクリニックへの定着につながり、早期離職の防止も期待できるでしょう。
<ここまで読んで下さっている先生方へお伝えしたい事>
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試用期間の注意点
試用期間が長い場合の求人におけるデメリット
試用期間が短いほど、応募者の応募意欲は基本的に高くなります。
試用期間の有無は求人票に明記するものなので、求人票によって比較がされます。
また、「試用期間」の存在が雇用される側にとっては身分が非常に不安定な状況のため、他クリニックで試用期間なしで内定が出たりすると、試用期間を不安に捉えて、内定辞退される可能性もあるということです。更に、試用期間中の給与が異なる場合も採用には不利な条件となります。
試用期間中の給与額について
試用期間中と本採用後で給与額が異なることは問題ありません。
ただし、雇用契約書などで明示する必要があります。また参照先ページをみると、約4割の一般企業では試用期間中の給与額を低く設定しているとしています。
試用期間中の給与はどうなる?本採用時より低いってあり?|転職Hacks (ten-navi.com)
クリニックのパートタイマーのまとめ
- 人員コストを抑えながら、必要な人員に必要な時間だけ働いてもらう
- 柔軟なシフト調整による業務負担の改善
- 人材リソースの観点からも経営基盤の強化
パートタイマーとは
パートタイム労働者の定義
パートタイム労働者(短時間労働者)の定義は
1週間の所定労働時間が同一の事業所に雇用される通常の労働者の1週間の所定労働時間に比べて短い労働者
とされています。
例えば、「パートタイマー」「アルバイト」「嘱託」「契約社員」「臨時社員」「準社員」など、呼び方は異なっても、この条件に当てはまる労働者であれば、「パートタイム労働者」としてパートタイム労働法の対象となります。
「パートタイム・有期雇用労働法」について
「パートタイム・有期雇用労働法」は2020年に施行された、主に正社員と非正規社員との待遇差を禁止する法律です。
「パートタイム・有期雇用労働法」の先駆けは、1993年に施行された「パートタイム労働法」です。「パートタイム労働法」が施行されてから数回の改正を経て、「パートタイム・有期雇用労働法」が施行されました。
2020年4月から大企業が対象になり、2021年4月から中小企業も対象になっています。
「パートタイム・有期雇用労働法」の改正3ポイント
- 不合理な待遇差の禁止(同一労働同一賃金)
- 労働者の待遇に関する説明義務の強化明示義務
- 裁判外紛争解決手続(ADR)の整備
順に説明していきます。
不合理な待遇差の禁止(同一労働同一賃金)
法改正により、基本給や賞与などにおける不合理な待遇差が禁止されました。
「同一労働同一賃金」とは、雇用形態にかかわらず、同じ業務内容であれば同じように賃金を支給する考え方です。正社員と非正規社員との不合理な待遇を禁止するため、以前から取り組まれてきました。
具体的に待遇の差が禁止されるものは、以下になります。
- 基本給
- 賞与
- 通勤手当
- 皆勤手当
- 福利厚生
- 教育訓練
労働者の待遇に関する説明義務の強化
パートタイム労働者や有期雇用労働者は、待遇差の内容や理由の説明を事業主に求められるようになりました。
説明が求められた場合には、事業主は待遇差に関して説明する必要があります。事業主は説明を求めた従業員に対し、解雇などの不利益な対応をしてはいけません。
またパートタイム・有期雇用労働者の労働条件は、個々の事情に応じて多様に設定されることが多いことから、パートタイム・有期雇用労働法において、これらに加えて、「昇給の有無」「退職手当の有無」「賞与の有無」「相談窓口(都道府県が指定するもの)」の4つの事項について、文書の交付などにより、速やかに、パートタイム・有期雇用労働者に明示することが義務付けられています。
裁判外紛争解決手続(ADR)の整備
行政ADRとは、労働者と事業主の紛争を裁判以外の方法で解決するための手続きです。
労働者と事業主でトラブルが生じた際には、都道府県労働局が解決の援助をおこないます。整備されたものは、以下のとおりです。
- 都道府県労働局長による紛争解決の援助
- 均衡待遇調停会議による調停
パートタイムを採用するメリット
その1. 人員調整しやすい
一つめのメリットに挙げるのが、人員調整のしやすさです。繁忙期や、昼間、土日など人が足りない時に働いてもらえます。それだけでも助かる上に、柔軟なシフト調整ができることは決して働く側だけでなく、雇用する側にとっても大きなメリットと言えます。
その2. 人員コストを抑えられる
支払う賃金を相応に抑えることが可能です。
パートタイムが担う業務は、一般的に正スタッフと比較してマニュアル化しやすいものが多く、業務の難易度はそう高くない傾向にあります。
ただし、あくまでもそれはパートタイム・有期雇用労働法に違反しないことが前提にあります。再三お伝えしているとおり、通常の労働者と同じ業務内容にもかかわらずパートタイム労働者だからという理由で給与(待遇)に差をつけてはいけません。
その3. 経営の基盤を構築できる
経営の基盤を構築する意味でも、パートタイム労働者を雇うことは有効です。
パートタイムと正スタッフを混合させることは、経営リソースの観点からしても、人材リソースの文脈でいえば、リスクヘッジにも繋がります。またパートタイム労働者にゆくゆくは正社員になってもらいたい場合も少なくないでしょうし、採用の間口を広げるチャンスでもあります。
人手不足の問題を根本から解消するのはなかなか困難かもしれません。他方、裏を返せば、中長期的な視野で採用活動に取り組むことが大切です。
パートタイマー活用の注意点
その1. 社会保険加入の問題
パートの方が今までより長く働くことになった場合、着目されるのが「4分の3基準」です。
- ①1週間の所定労働時間が一般職員の4分の3以上であるか
- ②1ヶ月の所定労働日数が一般職員の4分の3以上であるか
この①、②の両方の要件を満たしたときには常用的雇用関係があるとされて、社会保険に加入することとなります。
その2. 臨時的に4分の3を超えた場合
社会保険に加入させるつもりがない場合は、臨時的であっても4分の3を超えるのは1ヶ月のみとしなければなりません。
社会保険に加入させるつもりがなくても、例えばとても忙しい月があったり、急にスタッフが退職してその穴埋めとしてパートの方に勤務してもらうことがあると思います。その場合でも上記の要件に該当し、この状態が2ヶ月続いてしまうと、社会保険に加入する要件に該当するため、加入しなければなりません。
よくある質問
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