懲戒処分としてクリニックスタッフの給料を下げる方法
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こんにちは。株式会社メディカルリンクのクリニック採用コラム編集部です。
クリニックの運営において、スタッフの勤務態度は、患者の満足度や医療の質に直結する重要な要素です。しかし、中には勤務態度が思わしくないスタッフもいるかもしれません。そんな時、スタッフに対して減給による処分ができるのでしょうか?
今回は、スタッフの減給に関する法令、具体的な方法をいくつかご紹介します。
- 勤務態度が悪い従業員への対処法を知りたい
- 減給の具体的な手段を知りたい
- 減給の注意点などを知りたい
勤務態度の悪いスタッフに手をこまねいている院長先生は多いですが、減給はされないだろうとタカをくくっているスタッフも実は多くいます。
減給できる条件とは
今回説明する具体的なケースとして、
- 規律違反や問題行動への懲戒処分による減給
- 人事異動や人事評価による減給
- ノーワークによる減給
- クリニック都合による減給
の4つのケースをご紹介します。減給は労働者の権利に直結する問題であり、安易に行うことはできません。労働基準法をはじめとする関連法規を遵守し、正当な理由と手続きに基づいて行うことが重要です。
1. 規律違反や問題行動への懲戒処分による減給
減給は、クリニックが従業員に対して行う懲戒処分の一種で、一定期間、給与を減額する措置です。一般的に、就業規則に違反したり、クリニックに損害を与えたりした場合に適用されます。減給のケースとしては、
- ルール違反の場合: 無断欠勤、遅刻、私語など、クリニックが定めたルールを繰り返し破る場合。
- 不当な行為の場合: セクハラ、パワハラ、情報漏洩など、他の従業員やクリニックに不利益を与える行為。
- 業績不振の場合:目標を達成できず、クリニックに損害を与えた場合。
などが挙げられます。ただし、減給を行うには、事前に就業規則で具体的な基準を定めておくことが重要です。
2. 人事異動や人事評価による減給
仮にスタッフの等級を分けている場合、「3等級」へといったように「人事評価・給与制度での等級が下がることで減給となるケース」があります。能力不足等で人事評価が下がって降格するケース以外にも、「降格したい」「マネジメント業務から外れたい」など本人からの申し出により、降格するケースもあります。
降格による減給も、就業規則や賃金規定内に減額についての規定の有無や人事評価制度の結果、等級と給与の関係が定められており、従業員に周知されているなど、公平性のある運用がなされているかどうかによって、減給できないケースもあります。
3. ノーワークの結果、欠勤控除となり、減給となるケース
厳密には減給という定義ではありませんが、スタッフが何らかの理由で労働しなかった場合、クリニックはその分の給与を支払う義務がないという「ノーワークノーペイの原則」に基づき、「欠勤控除」として実質的に減給となるケースもあります。ノーワークによる減給の例として、体調不良や私用など「本人に責任のある欠勤・早退・遅刻」、台風や大雪など「スタッフにもクリニックにも責任のない遅刻・早退」などが挙げられます。
4. クリニック都合により減給するケース
景気の衰退や業績不振によりクリニックの経営が悪化した際、人件費を削減するためにやむを得ずクリニック都合として減給するケースもあります。その一例として、整理解雇(リストラ)や倒産を極力回避するために行う、毎月の給与や賞与の削減が挙げられます。
ただしこの場合も、クリニックの財務資料を用いて丁寧に説明するなど、適切に従業員側の理解を求める必要があるでしょう。
【重要】違法になる減給理由
「給与」は、労働者にとって重要な労働条件の1つです。クリニックはいつでも自由に減給ができるわけではありません。労働契約法第9条、第10条では、従業員にとって不利益となる変更(不利益変更)について、以下のように規定しています。
(就業規則による労働契約の内容の変更)
第9条 使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。ただし、次条の場合は、この限りでない。
第10条 使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の変更によっては変更されない労働条件として合意していた部分については、第十二条に該当する場合を除き、この限りでない。
原則として、「不利益変更」に当たる就業規則の変更、つまりクリニック都合による減給は認められていません。
第9条に規定されているとおり、労働者一人一人個別に合意を得た場合にしか、労働条件を変更することはできません。しかし、「①不利益変更の必要性や従業員の受ける不利益の程度などから就業規則の変更が合理的である」「②変更後の就業規則を周知していること」という要件を満たしていれば、減給といった不利益変更が認められるケースがあります。
また、一概に減給といっても、さまざまな種類があります。すぐに思いつくのは給料の減額ですが、それは、基本給の減額なのか、手当に関する減給なのか、休日を減らすことや、福利厚生として導入している手当をなくすのかなど、実施する方法によって難しさは変わってきます。最も厳格なのは賃金です。特に基本給や退職金の減額です。たとえば、とある地方銀行が争った判例では、「高度の経営上の必要性があった」のみ減給が認められると判じられています(最一小判H12.9.7 労判787号6頁)。一方、福利厚生を変更することは比較的緩やかに判断されると言えるでしょう。
ケースごとの「違法にならない」「違法になりづらい」減給理由
「減給」の要件は厳格です。先ほどご紹介した労働契約法第9条には、合意があれば減給などの就業規則の変更ができると記載(条文の反対解釈)されていますが、裁判実務においては単なる合意ではなく、使用者側からの十分な説明と労働者の自由意志による同意が必要とされているなど、その判断基準は非常に厳格です。
個別合意がない場合には、「就業規則変更の合理性」および「就業規則変更後の従業員への周知」の2つの要件を満たす必要がありますが、その合理性の判断は、クリニックの状況や労働者の状況など、判断基準の個別具体性が非常に高く、一概に違法になるか否かを断定しづらい問題だと言えそうです。
懲戒処分により減給するケースの流れと押さえるべき法律
続いて、規律違反や問題行動への懲戒処分により減給する際に、理解しておく必要がある法律や減給の流れなどをご紹介します。
押さえるべき法律
労働基準法第91条では、懲戒処分をする際の「減給の限度額」について、以下のように規定しています。
就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはならない。
上記の基準を満たさない場合、労働基準法違反となります。減給額を決める際は、「減給1回当たりの額が、平均賃金の半分以下」かつ「減給総額が一賃金支払期の賃金総額の10分の1以下」となっていないかどうかを確認しましょう。
減給に至るまでの流れ
懲戒処分は就業規則にのっとって行う必要があります。従って、就業規則内に懲戒に関する規定がない場合は、そもそも減給をすることは難しいと言えるでしょう。なお、「就業規則」はあらかじめ従業員に周知しておく必要がありますので、この点にも注意が必要です。
就業規則内に懲戒に関する規定がある場合、その後の手順も定められていることが一般的ですので、この場合は、当該規則にのっとって手続きを進めていくといいでしょう。
- ①事実確認
- ②処分理由の告知
- ③弁明の機会提供
- ④懲戒処分として減給が妥当か否かの検討
- ⑤懲戒委員会などへの付議
- ⑥対象労働者への通知
就業規則の記載事項例
就業規則は、クリニックにおける労働条件などを定めたもので、従業員とクリニックの間の契約の基礎となります。労働基準法で定められた事項に加え、クリニック独自の規定を盛り込むことができます。
下記を参考に減給規則を作成することが望ましいです。
減給期間
1回の規律違反や問題行動に対して、懲戒処分を行えるのは「1回限り」とされています。そのため、「1つの問題行動につき、1カ月間のみ」減給が可能です。「懲戒処分に該当する問題行動1つに対し、ペナルティとして減給を複数回行う」ことはできませんので注意しましょう。
よくニュースなどで、「〇〇株式会社〇〇取締役の報酬を1年間30%減額する」といった報道があるので、混同してしまう人事担当者も多いのですが、これは役員などが対象だからであり、従業員に対しては適用できませんので注意が必要です。
指導・注意の際の文章作成事例
実際に指導・注意する場合は下記を参考に文章を作成し、残すことが望ましいです。
その他の注意点
懲戒処分としての減給を行う際には、問題のある行動をしていないスタッフに与える影響についても、十分に考慮することが重要です。
懲戒処分はクリニックの秩序を維持するために行われるものですが、減給・降格などの懲戒処分が社内で繰り返されると、「社内が殺伐とした雰囲気になる」「スタッフが萎縮し、パフォーマンスが下がる」という可能性があります。「懲戒処分としての減給が本当に妥当なのか」「懲戒処分としての減給が妥当な場合、それをどう本人や周囲に伝えるのか」などを慎重に検討しましょう。
減給限度額の正しい計算方法
減給の計算方法について、解説していきます。
Step1. 直近3か月間の賃金総額を算出
例えば、毎月末締めの翌月10日払いという給与体系の場合、5月10日に減給処分を行ったとします。この場合、減給処分の直前の賃金締切日は4月末日ですので、そこからさかのぼって3か月間、具体的には2月1日から4月30日の期間について計算します。算出する賃金総額には基本給だけでなく、各種手当や残業代も含まれますが、賞与など臨時に支払われる賃金は除外されます。
また、ここでいう賃金の総額とは源泉所得税や社会保険料を控除する前の賃金の合計額です。このようにして減給の基準となる直近3か月間の賃金総額を明確に算出することが重要です。
Step2. 3ヵ月間の総日数を算出
次に、減給処分の基準となる賃金締切日から3か月間の総日数を算出します。この期間内の総日数を計算することで、労働基準法第91条に基づいた正確な平均賃金を求めることが可能です。
例えば、減給処分の基準日が2月1日と仮定した場合、対象期間は2月1日から4月30日までの3か月間となります。この期間の総日数を計算する手順は次の通りです。2月は28日(うるう年ではない前提)、3月は31日、4月は30日となり、これを合計すると総日数は89日となります。なお、この計算には休日や欠勤日も全て含まれる点を忘れずに考慮してください。
Step3. 賃金総額÷総日数を計算
減給の基準を計算するためには、まず①で計算した賃金総額を②で算出した総日数で割り、1日あたりの平均賃金を求める必要があります。具体的な手順としては、全ての賃金を合計して賃金総額を計算し、その総額を労働日数で割ります。
これにより、1日あたりの平均賃金が算出されます。
この計算手順は、労働基準法第91条に基づき、減給の基準が1日分の賃金の半額以下であることを確認するために不可欠です。適切な賃金管理と法令遵守を徹底するために、この計算方法を把握しておくことが重要です。
Step4. 最低賃金を下回っていないことを確認
最後に、減給後の賃金が最低賃金を下回っていないことを確認することが重要です。これは労働基準法第91条に基づく重要なステップで、法律違反を防ぐために必要です。具体的には、平均賃金の最低額が、Step1の計算による賃金の総額を減給処分の直前の賃金締切日から3か月間の出勤日数で割り、その結果に0.6を乗じた金額であることを確認します。
計算結果がこの平均賃金の最低額を下回らないか確認します。もし下回る場合は、減給限度額の計算においてこの金額を使用します。そして、平均賃金に1/2をかけることで、1回あたりの減給限度額が算出されます。この手順を守ることで、最低賃金を下回ることなく合法的な減給処分を行うことができます。
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懲戒処分としての減給をする場合の注意点まとめ
減給処分には就業規則の根拠が必要
減給の懲戒処分を行うためには、減給処分の理由となる問題行動が就業規則の減給処分事由に該当することが必要です。
通常の就業規則であれば、就業規則の懲戒の項目の中で、減給処分になる場合が記載されています。就業規則にある減給処分になる場合に該当することが、減給処分を行う大前提として必要です。
重すぎる懲戒処分は無効
減給処分が処分理由となる問題行動の内容と比較して重すぎる場合は、不当な懲戒処分として法律上無効になります。
このルールは「懲戒処分の相当性のルール」と呼ばれます。過去の裁判例では減給処分が重すぎるとして無効と判断されてケースも多いです。
就業規則上の手続きを守る
減給をはじめとする懲戒処分については、就業規則で「懲戒委員会を開いて処分を決める」とか「処分を決める前に本人の弁明を聴く」などといった手続きが記載されていることも多くなっています。
そのため、懲戒処分を行う前に必ず就業規則を確認し、これらの手続きが定められている場合はそれを守ることが必要です。
妊娠を理由に減給はできない
妊娠を理由に減給してしまうと、男女雇用機会均等法9条3項に定められている「婚姻、妊娠、出産等を理由とする不利益取扱いの禁止等」に該当する可能性があります。
事業主は、その雇用する女性労働者が妊娠したこと、出産したこと、労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第六十五条第一項の規定による休業を請求し、又は同項若しくは同条第二項の規定による休業をしたことその他の妊娠又は出産に関する事由であつて厚生労働省令で定めるものを理由として、当該女性労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
まとめ
減給は従業員にとって今後の人生にかかわるかもしれない大きな出来事といえます。減給を検討する際には、就業規則や賃金規定で減給処分について明記されているか確認したうえで、減給上限額の範囲内で規定にのっとった手順を踏みます。
減給の上限額は、労働基準法の規定に従って計算する必要があります。計算方法についてはやや複雑な部分があるので、適法性などに不安があれば弁護士や社会保険労務士などの専門家にアドバイスを求めましょう。
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