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「“理学療法士が転職で大切にすべき3つの条件”とは」ー 理学療法士の佐久間遥氏に聞く。

「人生100年時代」と言われる現代、理学療法士に求められる役割は病院での機能回復だけにとどまらず、生活期での自立支援や再発予防、地域連携へと広がっています。一方で、結婚や出産といったライフイベントをきっかけに、これまでの働き方を見直し、転職を考える理学療法士も少なくありません。今回お話を伺ったのは、回復期リハビリテーション病院から疾患特化型の入所施設へ転職した理学療法士・佐久間遥(33)さんです。長時間の通勤や家庭との両立に悩んだ末に環境を変え、「医療と生活のあいだ」に寄り添う支援へとシフトした佐久間さん。転職のきっかけや働き方の変化、理学療法士として成長できたポイントについて、率直に語っていただきました。

佐久間 遥(さくま はるか)

理学療法士として回復期リハビリテーション病院に勤務。結婚・出産を機に働き方を見直し、疾患特化型の入所施設へ転職。医療と生活の両面から利用者を支えるリハビリ支援に日々取り組む。自身の経験をもとに、理学療法士としての働き方や転職に関する執筆活動も行っている。【保有資格】理学療法士

目次

今行っている仕事や取り組んでいることについて

ー 現在はどのようなお仕事をされているのでしょうか。

佐久間:現在は、疾患特化型の有料老人ホームで理学療法士として勤務しています。病院とは異なり、入居者の生活そのものに深く関われる現場です。年齢層も50代から90代まで幅広く、自分で施設内を移動して有酸素運動や筋トレを行う方もいれば、寝たきりでサポートが必要な方もいます。

ー 利用者の方によって支援の内容も大きく変わるのですね。

佐久間:そうなんです。寝たきりの方には関節の可動域練習を行いますし、褥瘡予防のために日中に車椅子で玄関先までお連れし、日向ぼっこをする日もあります。個別リハビリだけでなく自主トレーニングに積極的な方も多く、「やらされている」というより自ら体を動かす姿が印象的ですね。

ー 病院勤務時代との違いも感じられますか。

佐久間:勤務して3年目になりますが、病院時代との違いを日々実感しています。特に大きな違いは「生活が見える」ことです。利用者さんの部屋の環境や日々の習慣、1日の行動全体を把握しながら介入できるので、より現実的な視点で「この人に必要なこと」を考えられるようになりました。

ー 病院勤務時代との違いも感じられますか。

佐久間:はい。病院と比べて転倒がとても多いのが特徴です。最初は驚きましたが、病院では「転倒=絶対NG」と考えていた固定観念がいい意味で崩れました。今では、転倒をゼロにするよりも「転倒しても自力で立ち上がれる筋力を維持すること」が自分のテーマになっています。

ー 病院勤務時代との違いも感じられますか。

佐久間:毎日同じ方と顔を合わせるため、緊張感が薄れ「なあなあ」な空気が生まれることもあります。そこは自分でも注意が必要だと思っています。ただ、それも日常的に関わるからこそ生じる関係性の一部なのだと感じています。

労働環境を変えたかった

ー 転職を意識し始めたきっかけを教えてください。

佐久間:結婚して子どもが生まれたタイミングでした。それまで働いていた病院は自宅から1時間以上かかり、毎朝満員電車に揺られて通勤していました。当時は子どもの送り迎えを夫にすべて任せていて、家事も育児もワンオペ状態にさせてしまっているような罪悪感がありました。しかも給料も低く、生活に余裕がない。「このまま働き続けて幸せなのか」と疑問を抱くようになったのです。

ー そこに職場環境の問題も重なったのですね。

佐久間:はい。医師や上司からのパワハラのような言動もあり、モチベーションは下がる一方でした。頑張っても認められないし、意見も言えない。さすがに「このままではダメだ」と感じて転職を決意しました。

ー とはいえ、すぐには踏み切れなかったのでは。

佐久間:その通りです。「施設は病院より給料が低いのでは」とか「人間関係を一から作り直すのが怖い」といった不安がありました。でも最終的には「このままでは本当に無理だ」という思いが背中を押してくれました。

ー 実際にどのように転職先を探したのですか。

佐久間:転職サイトに登録して求人を探しましたが、希望に合うものはすぐには見つかりませんでした。そんな中で今の施設を知ったのですが、すでに理学療法士の募集は終了していたんです。それでも「ダメ元で聞いてみよう」と直接本社に電話をかけたところ、面接の機会をいただけて、まさかの採用につながりました。

ー 新しい職場での生活はどのように変わりましたか。

佐久間:職場は自宅や保育園から近く、徒歩で通える距離です。子どもを笑顔で送り出せるようになっただけでも気持ちが大きく変わりました。業務も病院時代に比べて書類やカンファレンス、サービス残業などがなく、業務時間内に集中できる環境です。その分、利用者さんに向き合う時間が増えました。

ー 病院と施設での違いは、働き方や学びにも影響しましたか。

佐久間:大きく影響しました。施設ではリハ職も介護に関わるため、最初はトイレ介助に抵抗がありましたが、実際にやってみると「生活の一部」を支える大切な役割だと実感しました。新規オープンの施設だったので手探りも多かったですが、さまざまな病院や施設出身のスタッフと一緒に働くことで新しい考え方に触れ、刺激を受ける日々です。

病院こそ安定と思っていましたが、今では施設の方が自分に合っていると感じています。ストレスも減り、生活も落ち着きました。「前の職場に戻りたい」と思ったことは一度もありませんし、理学療法士としても人としても、この数年で確実に成長できたと感じています。

転職で上手く行ったこと・コツ・反省点

ー 転職がスムーズに進んだ一番の理由は何だと思いますか。

佐久間:今振り返ると「自分が何に妥協できないかを明確にしていたこと」だと思います。私の場合は、①給料 ②通勤距離 ③仕事内容(働き方)の3つが絶対に譲れない条件でした。「今と同じことの繰り返しは嫌だ」という思いが強く、この軸をぶらさずに活動できたのが大きかったです。

ー 具体的にどのように求人を探されたのですか。

佐久間:よく「給料が高そう」「人間関係が良さそう」という感覚で転職先を選ぶ方もいますが、私は最初に条件をはっきり決めていたので迷いませんでした。実際、今の施設は理学療法士の募集が終わっていたのですが、どうしても気になって本社に問い合わせたところ、面接の機会をいただけて採用につながりました。この経験から「募集がない=諦める」ではなく「聞いてみる勇気」も大事だと実感しました。

ー 転職エージェントは利用されましたか。

佐久間:私自身はうまく活用できなかったのですが、周囲の話を聞く限り、エージェントには日程調整の代行や内部の雰囲気の共有、自分では見つけられない非公開求人の紹介など、多くのメリットがあるようです。働きながらの転職活動は体力的に負担も大きいので、そうしたサポートは有効だと思います。

ー 反省点があるとすればどんなことですか。

佐久間:今の職場には満足していますが、ほぼ一択で決めてしまった点です。もし他の施設とも比較していれば、より自分に合う場所があったかもしれないという思いが少し残っています。ただ、それも含めて経験ですし、環境を変えるには勇気が必要だと感じました。

ー これから転職を考える方に向けて、伝えたいことはありますか。

佐久間:特に同じ職場で長く働いていると「ここを出たらやっていけないのでは」と不安になる人も多いと思います。でも実際には世界は広く、探せば自分に合う場所は必ずあります。私の経験が、その一歩を踏み出すきっかけになれば嬉しいです。

転職する方へのアドバイス

ー 最後に、これから転職を考えている理学療法士の方へアドバイスをお願いします。

佐久間:今の職場にモヤモヤがあるなら、深く考え込む前にまずは行動してみることをおすすめします。他の職場を知ることで今の働き方や環境を客観的に見直せますし、自分が本当に求めているものが見えてくることもあります。実際、私の周りでも「転職して後悔した」という人はほとんどいません。むしろ「こんな働き方もあるんだ」と気づき、今の環境に満足している人が多いと感じます。

転職は大きな決断に思えるかもしれませんが、まずは情報収集からでも十分です。転職サイトやエージェントを利用すれば、自分では見つけられなかった選択肢に出会える可能性があります。忙しい中で一から探すのは大変ですが、プロのサポートを活用すれば気持ちにも余裕が持てます。ひとりで抱え込まず、使えるものはうまく使いながら、少しずつでも前に進んでみてください。

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この記事を編集した人

転職に本当に必要な情報を届けるメディアというコンセプトで2024年に株式会社メディカルリンクの新規事業としてスタート。メディアを通じて今の自分に相応しい職場を見つけるサポートを行う。見やすく分かりやすいサイトデザインと徹底した取材・市場調査で転職を検討しているユーザーの満足度を上げる事をミッションに定める。

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